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20181116講演会「歴史修正主義とメディア:サブカルチャーで展開される歴史の政治」

先週金曜日、倉橋耕平さん(社会学、メディア論)を岡山大学文学部にお呼びして講演をしていただきました。倉橋さんの朝日新聞への寄稿に対し10月24日に小林よしのりが批判したばかり。さらに続けて百田尚樹『日本国紀』が出版され、歴史修正主義(歴史否認主義)が大手を振るってメディアに露出しているこのタイミングでの開催となりました。

ご講演で倉橋さんは、歴史修正主義の特徴について触れた後、2018年2月末に上梓された『歴史修正主義とサブカルチャー』の内容を市民・学生に分かりやすく説いて下さいました。その上で、小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』の「戦争論」がなぜ売れたのかについて、単純にプロパガンダテクニックを駆使しやすい漫画だったからというだけでなく、その流通上の特徴、さらには自己啓発性を強調していました。漫画というメディアで、歴史・国家と個の結びつきを促す自己啓発性を有する点に『ゴーマニズム宣言』の特徴があるとのことで、この観点はさらなる研究の深まりが期待されます。

講演会の後半では、司会の大貫が歴史学の立場から1. 史料批判の問題、2. 構築主義の影響を受け動揺する歴史学の問題、そして3. 歴史コミュニケーションの問題について補足説明をし、倉橋さんにいくつかの質問をしました。会場からも質問を受けつけたところ、いずれに対しても倉橋さんは大変勉強になる視点を提示して下さいました。

企画者の想定を上回る約110人ほどの来場者を得て、本講演会は大変盛況でした。質疑をもっと長く取ってほしかったという要望もあったので、その点に留意しつつ、今後もこうしたイベントを企画していきたいと考えております。

岡山大学文学部は「文学部プロジェクト研究」という部局構成員同士の共同研究を促進する予算を配分しています。こんな有意義な予算の使い方はないだろうと日々思っています。他の先生が企画されるものも含め、引き続きご注目下さい。

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