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『史学雑誌 回顧と展望』2011年
遅ればせながら先日『史学雑誌』の回顧と展望のうちヨーロッパ(中世ーイギリス)に目を通しました。執筆者は赤江さん。この文の見所はその枠構造にあって、冒頭で
K. Asaji, The Angevin Empire and the Community of the Realm in England, Osaka 2010.
H. Tsurushima (ed.), Nations in Medieval Britain, Donington 2010.
の2冊を紹介して、末尾に以下のように記して文章が閉じられているのである。
イギリス史の場合、論文に関しては、読者層の違いを意識することは引き続き必要だとしても、日本語で書くか英語で書くかは本質的な問題ではなくなりつつあるのではないだろうか。それは日本語での優れた業績や翻訳の蓄積と矛盾するどころか相補うものではないだろうか。
第一感、表現を慎重にして多くの読者に受け入れられるよう腐心されたのではと感じた。「本質的な問題ではなくなりつつある」という現状認識は全く同感で、日本語で執筆することが本質的な意味を持った時代はもはや過去の話であろう。
これは例えば西洋中世学会の学会誌に関する問題でもあって、果たして日本語の学会誌にどれほど意味があるのか、という疑問がある。日本語の学会誌は、あくまで欧語雑誌を補う形で、日本人研究者の学術コミュニケーションのを目的として発行されるのがよいのではなかろうか(例えば「研究動向」「書評」「学会活動報告」など)。無論、これはあくまで「こうなったらいいな」という程度の話で、現実問題として難しさがあることは承知している。これから時間をかけて議論されるのを期待している。
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