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「私と歴史学」

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4月2日、3年ぶりに対面で歴史学・考古学教室のガイダンスを実施することができました。新2年生、新3年生が一堂に介して自己紹介をしたり、カリキュラムについて説明したりしたり。対面実施を維持してくれた先生方に感謝です。

このガイダンスの中で、「私と歴史学」と題して30分ほどお話しする機会を与えられました。新任教員がやることになっているものですが、コロナにより2年延期になっていたというわけです。何を話したものか思案したのですが、ここはあまり格好つけず、自分の学部時代〜博士課程時代を振り返って、どのような関心を持って勉強していたのか、四方山話をしてみることにしました。

滅多に自分の学生時代を振り返ることはないので、その準備の過程で意外な発見があるなど、なかなか面白かったというのが正直なところです。内容を詳述することはできないので、ここでは各スライドに付したタイトルを列挙するにとどめます。

  1. 阿部謹也に憧れていたはずなのになぜか正反対のテーマを追いかけた学部時代
  2. 有名なテーゼにちっぽけな反証を挙げることで、「制度」の脆さを明らかにした気になっていた修士課程
  3. 修道院文書から社会史を叙述するとはどういうことか悩みながら、でも結局は地道に物量でなんとかした博士課程
  4. 物量でなんとかしたというその史料とはどういうものか
  5. 歴史研究の包容力について 

歴史学の魅力は多々あれど、やはりその包容力、懐の深さは特筆に値すると思います。史資料テキストを丹念に読むことは前提となりますが、語句解釈を塗り替えられる人がいる一方、僕のように物量でなんとかするタイプでも通用します。テーマも多種多様で、学生のみなさんも紆余曲折を経ながら専心できるテーマにたどり着けるでしょう。

今回学生時代を振り返ることによって、阿部謹也的ドイツ中世社会史っぽい何か→しっかりした国制史・制度史→修道院を核とした社会史、という変遷を初めて言語化することができました。そこで自覚したのは、僕はこれまで関わった諸先生方の影響を強く受け、「この人のようになりたい」と思える先生に出会ってきたのだなということです。しばしば「自分は学生時代ほとんど先生に指導されたことはない」と説明するのですが、それは一面では真実であるものの、その背中や言葉の端々から受け取る情報量がそのまま「指導」ということになるのです。そういう点で、教員としての自分はまだまだ未熟です。

今回は、オーケストラに専念していて学部時代はあまり勉強しなかったということを除くとプライベートに関わる話はほとんどしませんでした。しかし、特に大学院時代においては、私生活における喜び・苦悩・挫折と勉学は密接不可分です。ある程度は公私織り交ぜて話さないと、例えば院進学を考えつつも不安で躊躇している、といったような学生に真摯に向き合えたことにはならないと思います。他の先生のいる前で素面では話せない内容は、ぜひ今後ゼミの中で開陳していこうと思います。

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