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映画上映会&講演会「「家族の絆」って何?〜隣で寄り添う児童福祉のかたち〜」終わりました

去る12月18日、岡山大学文学部で映画上映会&講演会「「家族の絆」って何?〜隣で寄り添う児童福祉のかたち〜」を行い、多くの方にご来場いただきました。巷での評判がずば抜けて高かった映画「隣る人」を上映し、地元の児童養護施設の施設長さんからお話を頂戴する、という形式は4月頃から僕の頭にあって、関係する多くの方のご協力があってそのまま実現することができました。

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いきなり反省点を書くところから始めなければなりませんが、今回は来場者数の見積もりが完全に誤っており、用意していた配布物が足らずあたふたしてしまいました。前日までの反応を見る限り40〜50人くらいかと想像していたのですが、蓋を開けてみると120人を超える参加者を得て盛会に。それでも20番講義室は詰めると300人くらい座れるので、適度に間を空けて座れたのではないかと思います。

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映画は本当に素晴らしかったです。児童養護施設「光の子どもの家」の独特の形態の素晴らしさがよくわかりますし、そこで育まれる「親子関係」が子どもに必要不可欠なのだなと納得させられました。

イベントの後半は、岡山聖園子供の家の施設長則武先生にご講演いただきました。そこでは客観的なデータが示されつつ、とても重要なポイント、すなわち児童養護施設職員の労働環境と児童の就学状況についてご指摘いただきました。実はこの2点は、「隣る人」を見るだけでは見えてきません。

もちろん映画には当てたい焦点というものがありますので、それをしっかり描き切った映画の質は問い直すまでもありません。しかし、職員はプライベートな時間の多くを割いて子どもたちに献身し、子どもたちは子どもたちで進学するために高校時代にアルバイトで100万円貯金し、それでも足らなくて大学中退してしまう。つまり、システムとして明らかに職員と子ども自身に過剰に依存したものだということです。アンケートを見ますと、そうした問題点を、来場下さった皆さんと間違いなく共有できたと思います。

それでは里親に預ければいいじゃないか、という話もありますし、実際政策的にはそちらの方に動いていますが、僕がコメントしたように里親制度は日本ではなかなか進みません。


「親に恵まれない子ども」のうち、9割が施設に。「子どもを社会で育てる」ってそういうことなの? (1/2)

のような議論ももちろん筋論として真っ当であろうと思いますが、里親制度が進まないのは、日本社会独特の根深い理由があるのでしょう。そうであれば、児童養護施設の実態を踏まえて、そこで起こっている様々な問題に取り組んでいくのが目下重要なのではないでしょうか。

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それはともあれ、則武先生のお話はとても上手!さすが対外的に各所でご活躍なさっているだけはあるなと思いました。良質なドキュメンタリー映画を見て、それに関連する講演を聞くと、問題を多角的に捉えられるのでとても理解が深まります。岡山大学文学部主催の催し物として、これからも継承されていくといいなと思います。

そしてこれは完全に偶然なのですが、12月20日の山陽新聞朝刊に、先生が施設長を勤めていらっしゃる岡山聖園子供の家が天皇陛下の御下賜金を頂戴したと報道されていました。岡山県児童養護施設を牽引する存在として、これからも新しい試みをしていくのではないでしょうか。

会場からの質問をもっとお受けしたかったのですが、時間が押していてそれが許されませんでした。イベントの最後に「飛び入り」で、元外務省職員の佐藤香里さんからエクアドル児童養護施設「子どもの家」についてご紹介いただきました。

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エクアドルに赴任されている時にこの施設を扱った映画「Grandir」に出会い、以後支援を続けていらっしゃいます。国・社会が違えば、全く異なる文脈で児童のための施設が必要となることがよく分かりました。


エクアドル児童養護施設活動資金を集め、世界の子育てを変えたい(佐藤香里) – READYFOR?

佐藤さんはこうしたクラウドファンディングを主宰されていますので、もし関心のある方はぜひご協力ください。

そしてこれまた偶然ですが、本イベント翌日に「Grandir」がHumanity Exploredという映画フェスティバルの作品に選出されたとの一報が入りました。なんとこれを機にネット上で作品全編を見ることができます(英語字幕)。これの日本語字幕版を、ぜひまた岡大で上映したいなと思います。

準備には長い期間を費やしても、イベント自体はほんの2時間半。終わった後はとても物足りない気持ちがありましたが、これで満足していたら、きっと僕の関心もそこまでだったということでしょう。これからもいろいろな形で児童養護施設の問題に関わっていければと思っております。

改めて、ご来場くださった皆様と支援してくださった文学部の先生方に感謝申し上げます。

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