小澤実・長縄宣博編著『北西ユーラシアの歴史空間』
献本いただいたもので、積んだまま行方不明になっていたものはなるべく紹介することで不義理をわずかながらでも解消したいと考えています。どうも申し訳ありません(と先に謝っておく)。
小澤実・長縄宣博編著『北西ユーラシアの歴史空間ー前近代ロシアと周辺世界』は2016年出版。編者直筆の手紙により自分が少しずつドレスデン渡航に向けて準備していた頃だということが思い出されてきました。本書は北海道大学スラブ研究センターでのシンポジウムの研究報告書の増補版で、何段階か経ているために論集として一体感が非常に高い。ユーラシアを対象としながらあえて(かどうかはわからないが)広大なロシアを中心として扱わず、それに隣接する(これまたやはり広大な)諸地域を扱うことで、逆にユーラシアの歴史を浮き彫りにしようという試みと理解しました。さらに、そこにロシア史家による「総論」を2つ付すことで先の一体感を強めている。あえて論集を編むのだから、せめてこうありたいですね。目次は以下の通り。
まえがき
序 章 北西ユーラシア歴史空間の射程…小澤 実
第一部 異文化集団との接触(九世紀から一四世紀)
第一章 《総論》統一国家成立までのロシア…宮野 裕
第二章 アラビア語史料に記録された北西ユーラシア世界―とくにイブン・ファドラーン『報告書』による―…家島彦一
第三章 キエフ・ルーシ形成期の北西ユーラシア世界とスカンディナヴィア―ルーン石碑の検討を中心に―…小澤 実
第四章 ロシア/ビザンツ緩衝地帯の蛮族観について―一二世紀ビザンツ史書におけるペチェネーグを題材に―…草生久嗣
第五章 コンスタンティノープルのストゥディオス修道院とルーシの修道士―正教文化の伝播について―…橋川裕之
第二部 チンギス裔とオスマン朝からの視線(一五世紀から一七世紀)
第六章 《総論》「ロシア帝国」への道のり…濱本真実
第七章 一五世紀ジョチ朝とモスクワの相互認識―ロシア語訳テュルク語文書を中心に―…川口琢司・長峰博之
第八章 ペルシア語・チャガタイ語諸史料に見えるモンゴル王統系譜とロシア…赤坂恒明
第九章 オスマン朝におけるヨーロッパ認識の伝統と革新―一七世紀中葉以前の北西ユーラシア観を中心に―…小笠原弘幸
終 章 ロシア近現代史の視点から…長縄宣博
人名索引
事項索引
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