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2017年春〜夏の学会シーズン

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5月から7月頭にかけて、3つの学会に参加してきました。

①第67回日本西洋史学会(5月20〜21日、一橋大学
②第9回西洋中世学会大会(6月3〜4日、首都大学東京
③International Medieval Congress 2017(7月3〜6日、リーズ大学)

体力的になかなかシビアでした。特に一時帰国×2では、定期的に日欧を往復している人の苦労を身にしみて感じます。実際、フランクフルトのJALカウンターに行くと、よく見かける人がいるのです。彼らは毎週のように移動しているかと思うと頭が下がります(とはいえ、そういう人は大抵ファーストクラスカウンターに並んでいるわけですが)。

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西洋中世学会の特別展示から

学会は、いずれも意義深い内容でした。

①では、林賢治「12世紀南ドイツにおけるヒルザウ改革派修道院の交流」の司会をしてきました。かねてより、修道会の形をとっていないベネディクト修道院がどのように人的交流・情報共有を行なっていたのか関心があったので、ヒルザウの事例を聞けてとても勉強になりました。12〜13世紀の修道院の増加と修道会への組織化は、全ヨーロッパで情報の流通量を激増させます。しかし、その割には人や情報の移動を支える技術はまったくと言っていいほど発達しなかったのですよね。この矛盾があったので、13世紀に修道会が地域化していくのは必然だったのではと思います。今はむしろそういう技術が先行し、かつ圧倒的なスピードで発達しているので、当時とは真逆の局面を迎えていると言えるでしょうか。

②では、「シトー修道院と小教区共同体の相互コミュニケーションー中世盛期のラインラントとフランケンの事例から」という自由論第報告を、③では②の内容を縮約し、セッションのテーマである”Inside and outside: Relationships between monasteries and the world”に寄り添った議論を少し盛り込んだ”A Study of the Mutual Effect Relationship between the Cistercian Monastery of Heilsbronn and Parish Communities”を報告してきました。

いずれも、「シトー修道院と小教区教会」の関係史を見直すという個人科研の成果中間報告です。ようやくこれまでのライン地方からドイツ中部まで検討を広げることができたのですが、質疑応答やその後の(懇親会にも及んだため空腹と酩酊の中で行われた)議論から、色々な方向に広げることができそうなテーマであることが分かってきました。中世を通して修道院が教会を所有していたことはよく知られた現象ですが、その意味するところは従来の理解を大きく超えたところにありそうです。

こうして、日欧の学会で研究内容を聞いてもらった上で、日本の頼れる研究者仲間、そして続いてドイツやイギリスの研究者と今後のことを話し合ってきました。より包括的かつ波及効果の高いテーマを設定して、(比較的大きめの)シンポジウムないしワークショップを日本で開催したいと思っています。そのためには、日本で研究会をシリーズ化して、母体のようなものを作った方がいいような気も。不慣れで手探りですが、面白くなりそうです。本件は、また少しずつお知らせしていきます。

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