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『史学雑誌』2018年の歴史学会ー回顧と展望ー

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歴史学界における梅雨空の風物詩、「回顧と展望」(『史学雑誌』第128編第5号)が送られてきた。去年は論文を出していないためさほど緊張感なく紐解いたが、5月に訳書『中世共同体論』を出していてこれがどう評されているか、あるいはそもそも取り上げられているか少し心配だった。中世共同体論 ヨーロッパ社会の都市・共同体・ユダヤ人amzn.to7,480円(2019月10月17日 17:35 詳しくはこちら)Amazon.co.jpで購入する

見てみると、中世の「一般」と「中東欧・北欧」とで取り上げられていた。評者には心からの感謝を。この訳書=論文集は7本の論文を集めたものだが、この7本は編者が時間をかけて選び、出版社とすり合わせをした結果、訳出を決定したものである。博士論文を書く中で著者ハーファーカンプの問題関心の履歴を必死に追ってきたこともあり、編者3人にとってこの7本を3部構成に編むことはある意味必然的な「解」なのだが、この構成を2人の評者に指摘していただけたのは嬉しかった。

さらに「中東欧・北欧」の方では、本書を参照しながら2本の論文を評していた。本書の有する学術的意義はいかばかりか計りかねるところもあったのだが、盛期〜後期中世の「都市」、「共同体」、「ユダヤ人」を考える上で、分かりやすい参照軸を与えることに成功したのかもしれない。出版からちょうど1年が過ぎた。引き続き多くの人に手に取ってもらいたいと思う。

その他、「回顧と展望」では高山博による「総説」と嶋中博章による「歴史理論」を読むことができる。前者は、「グローバル化時代における国民国家」というお得意の枠組みを提示し、最後に少しだけインターネットにより社会の分断化が進んでいることに触れ、関連図書の出版が相次いだ朝河貫一の言葉を紹介している。著者の日々の関心の通りの内容であった。

後者は、グローバル・ヒストリーと、へんドン・ホワイトとジャブロンカ。グローバル・ヒストリーについては、弓削尚子が近代のところで指摘しているように、「西洋近代」を特権視しないところに意義や面白みがあると感じる。だからこそ、現在むしろ古代〜中世史で興味深い取り組みが進んでいるのではないか。例えば今年で最終年度を迎える鶴島科研など最たるもので、貨幣を通じてユーラシアの西側半分、そしてさらには極東アジア地域まで接合していく。実にパワフル。接合できるものをなぜこれまでしてこなかったのか、ということを考えると、グローバル・ヒストリーの方法論上の意味が見えてくるように思うし、現状その定義を羅列的にでも挙げることは可能だと思うのだが、この「歴史理論」では「グローバル・ヒストリー」とは何かをずっと問うたままである。

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