シンポジウム「「近世世界」の展開―日欧比較・教会・文化をめぐって―」
3月21日(土)に福岡大学にて「「近世世界」の展開―日欧比較・教会・文化をめぐって―」と題したシンポジウムが開催され、コメンテーターとしてお邪魔してきました。実はこれが学術面では初めての九州上陸となり、それなりに緊張していったのですが、共催していた九州西洋史学会と九州歴史科学研究会の皆さんが大変居心地の良い雰囲気の中運営をされていて、懇親会も含めて楽しく過ごすことができました。改めて、シンポジウムを運営していた先生方に感謝申し上げます。
第1部(14時~15時55分)
14:00~14:40 安高啓明(西南大学)「近世人の法認識―法の入手過程と理解―」
14:40~15:20 大場はるか(日本学術振興会特別研究員PD)
「近世ドイツ語圏のザビエル崇拝:日本のキリシタンとの関係に注目して」
15:20~15:35 コメント 大貫俊夫(岡山大学)
15:35~15:55 討論第2部(16:10~18:05)
16:10~16:50 高津秀之(東京経済大学)
「フリードリヒ賢公の夢―宗教改革百周年記念ビラにみる宗教と政治―」
16:50~17:30 小林繁子(新潟大学)
「中央権力と地域社会―魔女裁判における「神罰」をめぐって」
17:30~17:45 コメント 原田晶子(東京大学)
17:45~18:05 討論
会の趣旨は、近世ドイツを中心にした若手研究者に最前線の研究内容を話してもらい、「近世」という時代の理解を深めようというものでした。出席者は全員が西洋史プロパーというわけではないことは事前に伺っていたので、コメンテーターとしての役割として、報告2本を受けてそれを大きな文脈に置き直して基礎レヴェルの確認をすることがまず肝要であろうと思っておりました。
自分が受け持ったご発表が日本法制史の安高さんと近世ドイツ史の大場さんで、分野の違いから総括が大変難しい内容でした。各発表に寄り添ったコメントは荷が重いので、両者に共通する視点として近世における「規律化」の強化を導入し、議論を都市当局による時間の管理の問題に限定し、さらにそれが可能となる前提条件として、都市民が時間感覚をいかに共有していたのか(し得たのか)という問いから中世にまで遡り、最終的には教会・修道院の聖務日課と鐘の合図の話にまで展開しました。強引ではありますが、ある程度自分の専門に引き付けるにはこれしかないという気持ちでおりましたし、何より中世から近世を眺めやる方法は近世理解をうまく助けてくれるのでは、という思いがありました。中世を専門とする自分が呼ばれた意味を咀嚼した結果、こうなったわけです。
コメントを用意する過程で、改めてエストライヒとル・ゴフから興味深い知見を得られましたし、ポリツァイ研究の最前線について佐久間弘展「ドイツ中近世史におけるポリツァイ研究の新動向」と齋藤敬之「15世紀後半ライプツィヒにおける都市内平和・治安維持政策の進展 : ポリツァイ案件を中心に」から学ばせてもらいました。ありがとうございます。
- 作者: ゲルハルトエストライヒ,阪口修平,山内進,千葉徳夫,Gerhard Oestreich
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もうひとつの中世のために?西洋における時間、労働、そして文化
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