K. Kroeschell, Deutsche Rechtsgeschichte, Bd. 2の第1部から
K. Kroeschell u. a., Deutsche Rechtsgeschichte, Bd. 2: 1250-1650, 9. Aufl., Köln/Weimar/Wien 2008の第1部の第1章と第2章を読む。本シリーズはドイツ法制史の「教科書」と言えるもので、1972年の初版以来ほとんど改訂されること無く増刷されており、この度大きく改訂され出版社も変わった。とりわけクレッシェルが本書を書いた時代に法制史研究に大きな影響を与えていたマルクス主義的歴史解釈を見直したと序文にある。
第1部序文は、「中世法の最も目に付くメルクマールの一つにその多領域性(Vielräumigkeit)がある」という一文から始まる。中世には様々な法クライスが併存し(例えば都市法とラント法は互いに排他的に成立している)、人は複数のクライスに同時に所属することができる。しかし唯一中世ヨーロッパ全体を包括する法共同体があり、それがローマ教会である。これまでドイツ法制史は世俗法ばかり研究されてきたが、教会法の研究なくして中世法の像ははなはだ不完全であろう、と締めくくって以下Corpus Iuris Canoniciを扱った第1章へ。
第1章は、Corpus Iuris Canoniciを構成する教会法集成(グラティアーヌス教令集、Liber Extra、Liber Sextus、Clementinen)を順次紹介しているのだが、この12〜14世紀初頭にかけて行われた法整備は「西欧教会の根本的な構造転換の表現」であるという部分が重要であろう。すなわち、ますます聖職が裁判権力に転化している時代に、こうした整備が進められたわけである。この教会の変化が後のルターによる宗教改革を生んだことは言うまでもなく、ルターが1520年12月10日の朝に教皇勅書Exsurge Domineを火に投げ入れたとき、同時に炭と化したものの中に教皇令集が含まれていたのはおそらくルターの気まぐれではないのである。
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