中世におけるメスのベネディクト会修道女
先日sehepunkteの最新号で書評が掲載されていたので早速購入したのがゴルドン・ブレンネマンの『中世におけるメスのベネディクト会修道女』。
Gordon Blennemann, Die Metzer Benediktinerinnen im Mittelalter. Studien zu den Handlungsspielräumen geistlicher Frauen (= Historische Studien; Bd. 498), Husum 2011.
ロレーヌ地方の最大都市メス(Metz)の女子修道院サント=グロサンド(Sainte-Glossinde),サン=ピエール=オ=ノナン(Saint-Pierre-aux-Nonnains),そしてサント=マリ=オ=ノナン(Sainte-Marie-aux-Nonnains)を比較検討した研究で,2007年にマインツ大学に提出された博士論文が元になっています(指導教授は中世女子修道院研究を推進するフランツ・ヨーゼフ・フェルテン)。章立ては以下の通り。
I. 序論
II. 起源からロタリンギア修道院改革まで(7〜11世紀)
III. 農村・都市領域における経済的・法的行為(11〜14世紀)
IV. 13,14世紀における宗教的・社会的相互作用の場と形態
V. 結論
VI. 補遺
今日,本研究を指導したフェルテンの論文(F. J. Felten, Frauenklöster und -stifte im Rheinland im 12. Jahrhundert, in: S. Weinfurter (Hrsg.), Reformidee und Reformpolitik im spätsalisch-frühstaufischen Reich, Mainz 1992, S. 189-300)の中で示唆されていたのですが,ライン地方に比べトリーア,メスなどよりフランス語圏に近い地域では,シトー会の女子修道院の成立は13世紀に入ってからでやや遅い傾向があります。そういう記述に出会うとぱっと「それでは12世紀にロレーヌの女性の宗教性はどのようにすくい上げられたのか?」と考えるのですが,ひとえにここで扱われている初期中世以来のベネディクト会女子修道院が大きな役割を果たしていたのではないかと思います。初期中世から続く修道制の長く強固な伝統があるからこそ,12〜13世紀のシトー修道制というブームに乗り遅れるわけです。
何かの分野で先進地域があったとして,先進地域だからこそ立ち遅れるという現象。相当普遍的に観察されるのではないでしょうか。
こうした修道院の比較は自分もまさに同様の手法でやっているので,その議論の仕方は大変参考になるはずです。おそらく博論では間に合わないので,今のうちに読んでおいて出版の段階で反映できればと思います。
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