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『西洋中世文化事典』出来!

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2021年に西洋中世学会が主体となって作成することが決まった『西洋中世文化事典』が、このたび刊行の運びとなりました。本日、担当編集者の方が南大沢まで届けてくださり、今後のことも含め、しばしお話を伺うことができました。Tさん、神保町から乗り換えなしで来られるとはいえ、遠路はるばるありがとうございました!

実際に手に取ってみると、以前2項目書いた『ドイツ文化事典』と同じフォーマットながら細かなところが大変洗練されており、表紙もワインレッドが映え、どっしりしつつもおしゃれな雰囲気に仕上がっていました。この表紙は、これまでの「事典シリーズ」のデザインを踏襲せず、Tさんの熱いこだわりが反映されているそうです。「西洋中世学会編」の上には学会公式ロゴも。

丸善出版の特集ページ「西洋中世に光を当てた全16章296項目『西洋中世文化事典』刊行!」
https://www.maruzen-publishing.co.jp/info/?action=detail&news_no=20901

僕は16章「中世受容と中世研究」の編集を担当し、その冒頭に置かれた「中世暗黒説の諸相」という項目を執筆し、16章の章扉の文章の下書きもしました。編集自体は(本全体にわたり)小澤実さんと松田隆美先生におんぶに抱っこ状態でしたが、項目の選択はどの章もこだわり抜いたもので、当初の企画から1項目も落とさなかったという話には驚くばかりです(とはいえこれも小澤さんに…)。

この企画が始まった2021年は、ブラック『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』の訳書を刊行し、僕自身中世受容の問題に強く関心を持っていたので、この16章を入れることができて本当によかったです。もし10年前に企画していたら、少なくとも中世受容についてはこのような形にはなっていなかったと思います。サントリーで一緒に取り組んだ松本涼さんと小宮真樹子さんは「西洋中世と日本のサブカルチャー」でその研究成果を遺憾なく発揮し、白幡俊輔さんは「城と城塞」と「騎士道と武具」で軍事史に関する幅広い知識を披露してくれています。僕は16章の構成・内容を踏まえ、中世主義・中世受容について、本事典のスピンオフのような位置付けでシリーズものを出したらいいのではないかと考えているのですがいかがでしょうか。

本書のもう一つの特徴は、巻末に「引用・参照文献」が掲載されているところです。すべての項目について、さらに知識を深めたい人のために関連文献を知ることができます。例えば卒論で扱うネタを探す上で、あるいは中西風ファンタジーを描く時のネタ元として、本書ほど便利なものはないでしょう。Tさんによれば、図書館からの注文が想定をかなり上回っているそうで、税込26400円にも関わらず、一般の方の予約注文もかなりのものだそうです。これは中世ブーム到来か?そんな期待を持たせる事典を、多くの方に手に取っていただければ嬉しいです。

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