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2023日本西洋史学会大会@名古屋大学

4年ぶりの日本西洋史学会大会に参加するため、少なく見積もっても15年は訪れていなかった名古屋へ。修士課程まで初期中世を研究していて、そうするととにかく佐藤彰一先生の影響は絶大で、勉強しによく研究会に足を運んでいたのでした。留学を経て帰国すると先生はもうご退職されていて、名古屋に行くきっかけが消滅して今に至ります。今回、「(駅前が)ずいぶん変わったでしょう」と言われても、前がどんなだったか覚えていないので「はい、そうです(か)ね…」と微妙な返事しかできませんでした。とはいえ確かにリニアの工事も着々と進んでいて、これがご近所橋本と直結するのかと少し感動。

1日目。例年通りご退職されたばかりの先生方のご講演。山辺先生のお話はボローニャ大学900年史。ボローニャ・プロセスまで連綿と続く役割をよく理解できました。松本先生の連れてこられた外国人兵士・労働者の話は社会史、ジェンダー史的アプローチ。植民地男性と親しくなる白人女性を眺めやる白人男性の視線がとても興味深かったです。

レセプションは大変盛況でした。

2日目午前。書籍展示を見てから少し遅れて中世史部会へ。第1報告で質疑が行われているなか、盛況だったため前の方に恐る恐る着席しましたが、ほぼ同じ列に上記の佐藤先生が。背筋が伸びる。ドイツ騎士修道会を扱った第3報告で質問しました。修道会ごとに巡察制度の形は異なるので、ドイツ騎士修道会のケースについて知見を共有してほしいと思ったからでした。シトー会とクリュニー会を比較しつつ、レクシントンのスティーヴンが残した巡察記録を分析した論文が以下の論集に掲載されています。

高山博・亀長洋子編『中世ヨーロッパの政治的結合体』(amazon)

質疑の最後に、法制史の先生からitineraryとvisitationを日本語の概念としてどちらも「巡察」としてしまってよいのか、という本質的な質問が出ました。僕も慣例に従ってvisitationを「巡察」としてきましたが、「巡」を避けて例えば「視察」でもよいのかもしれません。これはちゃんと考えないといけません。

2日目午後。小シンポジウムは「Domesday Book からみた銭貨製造人 (moneyers) の社会」に参加。イギリスから来たRory NaismithとDavid Roffeがドゥームズデイ・ブックに現れる銭貨鋳造人に関する調査結果を整理し、それを引き受ける形で鶴島先生が銭貨鋳造人の社会・経済的役割を提示していました。最後に言及された「3つの時間」を内合する貨幣という定式は大変示唆深く説得的でした。貨幣を通して、大陸とは異なるイングランド独自の社会・経済秩序の変遷を知ることができるという意味において、意義深い共同研究だと思いました。なお、この問題に関する鶴島先生の論文として「なぜ銀のペニー貨は中世イングランドにおいて流通したのか」(pdfファイル)があります。

対面学会の意義はもはや言うまでもありません。オンラインだと事前にレジュメが配布されるわけですが、それを受け取るともう話を聞いた気になってしまっていけません。大変有意義な時間を過ごすことができ、開催校である名古屋大学の皆さんには感謝申し上げます。来年は東京外国語大学でお世話になります。

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