『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』出版から1年が過ぎて(1)
2021年4月、監訳書『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』を出版しました。手伝ってくれた内川勇太、成川岳大、仲田公輔、梶原 洋一、白川 太郎、三浦麻美、前田星、加賀沙亜羅各氏、そして担当の編集者赤井茂樹氏に心よりお礼申し上げます。出版の経緯は訳者あとがきに書きました。そちらをご覧いただければと思いますが、すべての発端は当サイトの記事「中世のペストに関する3つの誤解」 です。2020年3月にコロナ禍が始まり最初の緊急事態宣言が出されるなか、誰が発したどのような言葉が正しいのか、皆目見当がつかなくなってしまいました。それは、あたかも真っ暗闇の中で、正い出口を目指せ!と命じられているような状況。そこでしばしば論説文や政治家の発言に中世の黒死病を見出す機会が増えましたが、その内容があまりに古色蒼然としているのに驚愕しました。その時の感情のエネルギーによって、ゴールデンウィークに入った頃(しかしいまだ大学の授業は始められなかった頃)、上のブログ記事を一気に書き上げました。
黒死病という中世ヨーロッパの代名詞と言える出来事でさえ、私たちは数多くの誤解を持ちながら生活しています。そして、コロナにかこつけて平然とその誤解をひけらかしています。しかし、そうした誤解の広がりとともに僕が驚いたのは、危機に陥ったときに歴史を振り返りたがる人間の性です。その時、私たちはもっぱら自分が求めるものを過去に求めてはいないか?そのような歴史の振り返りは、一見知的な営みにようでいて、実に安直で下世話な行為なのではないか?歴史認識の問題は、何も現代史の専売特許ではなさそうです。
そこで、中世ヨーロッパをめぐるファクトとフィクションの関係に光を当てる本書の価値を認め、仲間と一緒に翻訳をスタートさせました。企画から校了までわずか半年。コロナ禍で国内外の出張ができなくなり、時間を捻出しやすかったからこそ可能だったのだと思います。2021年4月下旬に出版され、その後おかげさまで4刷りまで出すことができ、西洋中世史のみならず、広く歴史に関心のある方に手にとっていただきました。読者の皆さんの反応はおよそすべてに目を通しました。ここに、インターネット上で読める書評を列挙しておきます。特に新聞書評の出足が早く、またYouTubeチャンネル「哲学の劇場」を運営している山本貴光さんと吉川浩満さんが出版直後に紹介してくださったことは望外の喜びでした。なかには批判的なものも多く含まれますが、すべてが今後の糧として活かせるはずです。
朝日新聞書評:https://www.asahi.com/articles/DA3S14960037.html
日経新聞書評:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO73023860Y1A610C2MY5000/
公明新聞書評:https://twitter.com/aogami_noboru/status/1416927186792042497
東洋経済:https://toyokeizai.net/articles/-/574348 →HONZ:https://honz.jp/articles/-/46012
週刊文春(吉川浩満「私の読書日記」):https://clnmn.net/archives/3909
YouTubeチャンネル「哲学の劇場」:https://youtu.be/gh-QhMcMl-o
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4582447139/
ブックメーター:https://bookmeter.com/books/17561831
本が好き!:https://www.honzuki.jp/book/300492/
ブクログ:https://booklog.jp/item/1/4582447139
ブログ「明日もシアター日和」レビュー:https://ameblo.jp/theatregoing/entry-12690577346.html
ブログ「ミリタリーマニアの生きる道」レビュー:http://bookguidebywingback.air-nifty.com/military/2021/05/post-c09f6e.html
次の記事では、本書を用いて取り組んできた活動の内容をお伝えします。
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