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拙稿「中世盛期におけるシトー会修道院の保護形態」の書評
先日『法制史研究』64号が刊行されました。早速目を通したところ、同誌62号に掲載された拙稿「中世盛期におけるシトー会修道院の保護形態」について、中央大学の杉崎泰一郎先生が書評を書いて下さっていました(478-480頁)。大変嬉しく、ここにお礼申し上げます。
この論文は、ドイツ最西部の2つのシトー会修道院を比較して、それらの保護について考察するという内容です。 従来法制史・国制史の文脈で扱われてきたシトー会修道院の保護。そこでは、創設家門によって担われていた保護関係はとても安定したものとして認識され、最終的に13世紀以降領邦権力が発達する中でそこに取り込まれていく、という単線的な絵が描かれていました。しかし、修道院の持つ宗教的な力を保護と関連付けながら丁寧に追っていくと、保護関係は12世紀末に一旦大きく転換し、それに伴い修道院の世俗社会との関わり方も変化したことが分かってきます。
この時代の転換は、従来別の文脈で論じられてきました。それはシトー会修道院の「世俗化」です。シトー会士は、この頃(=クレルヴォーのベルナルドゥスの死後しばらく経って)清貧を旨とする「使徒的生活」が緩み、世俗社会との交流が増え、その持ち前の霊性が時代に応えられなくなり托鉢修道会に主役の座を奪われた、という議論です。しかし、この教会史における評価ははたして妥当なのでしょうか。
このように、この論文は法制史と教会史の狭間に置かれた修道院保護の問題を再考したものです。杉崎先生の書評は論旨を丁寧に追い、とても好意的に評して下さっています。末尾に今後の課題として何点かご指摘下さっていますので、夏までに書き上げようと思っている論文でそれにお応えできればと思っています。
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