西洋史演習のリズムが確立したか〜その1
ここで何回か西洋史演習(ゼミ)の話題を書いています。というのも、講義と違いこの授業が一番教員の個性が反映されるし、教育現場として最もスリリングですので、どうしても僕自身考えることが沢山あってアウトプットしたくなるのです。水準は大学院に進学したい人を常に意識しつつ、それでも西洋史あるいは西洋中世史のことをほとんど知らない人も包摂できるような授業、とはどういう形式が望ましいのか。大貫ゼミでは、そういうことを考えてやってきております。何分すべて初めての経験なので、試行錯誤している点は否めませんが。
この記事では、西洋史に少しでも関心のある1年生、高校生、そしてすでに西洋史に来ている学生を対象に、西洋史演習の授業を僕がどういう意図でやり、実際この1年間どう運営していたのかを説明してみようと思います。ちなみに、岡山大学文学部では2年生から大くくりのコースに分かれ、歴史文化学専修コースを選んだ学生は、さらに最初のガイダンスの際に日本史・東洋史・西洋史・考古学のうち卒論を書きたい領域を選びます。この段階で一応西洋史研究室所属、ということになるわけですね。制度上厳密には違いますが一応そういう理解でよいと思います(僕もこの辺は母校と全然違うので最初全然分かりませんでした)。
僕の西洋史演習は、大きく①外国語文献の講読と②ディスカッションの二つで構成されています。一つづつ見ていきましょう。
①外国語文献の講読
外国語文献の講読は、日本の西洋史のゼミではもはや伝統と言ってもよい形式です。少しTwitterで情報交換して分かりましたが、これは他分野(特に理系)の方には少し理解しがたいものがあるようです。しかし、多くの学生は英語を除けば大学に入ってから外国語を習得するわけで、その英語ですら専門的な文献を読む技術を身に付けているとは言えない状態です(個人差は無論相当ある)。母国語でない文献を基礎にして卒論を書く以上、外国語文献を他人と読み合うプロセスは絶対に必要になります。
うちでは僕がドイツ語をやっていて、同僚のY先生が英語をやっているので、フランス語に代表されるロマンス諸語での文献購読ができていません。西洋史は各学年10〜15人の大所帯。それなりの学生がフランス語を学び、近年では交換留学でフランスに行く道が開けているので、そういう学生へのフォローをどうするのか。なかなか悩ましい問題です。
そはともかく、学生からしてみたら、単位取得のためなるべく両方の演習をとりたい。そのためドイツ語未習でも僕の演習に来るわけです。4月の授業初回にそういう学生が結構いて面食らったことは、正直に告白させていただきます。しかし、ともかく丁寧にやるという基本路線から逸れることなくやってみました。すると、気付いたときには未習者でも担当箇所をそれなりに音読し、それなりに日本語訳できるようになっていました(もちろん完璧に訳せる人はほとんどおらず、誤読の度合いが僕の手に負えるようになってきた、ということですが)。学生側の達成感はいかほどか、よく分かりません。しかし、ドロップアウトすることなく皆学期末を迎えてくれて良かったなと思います。
(その2に続く)
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