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修道院と気候
今教授が僕の博士論文についてもっぱら関心があるのは,修道院の経済危機と周辺農民の動向,そして両者に影響を与えたであろう悪天候による飢饉の関係です。このテーマに関してちゃんとした研究がないため,古い研究を参考に新しい見地を見出そうとしています。
こういうとき,つくづく二つの修道院を比較研究していてよかったなと思います。というのも,何か2つの事象に因果関係を見出そうと思っても,単独の事例だと難しいからです。異なる修道院から同様の事例を見出すことで,自らのテーゼに一定の説得力を持たせることができるのではないでしょうか。詳しくは完成した論文で読んでいただく他,何か単独で論文にならないかと思っています。
一昨年から,口頭発表でシトー会修道院とフォークタイの関係について論じてきましたが,この件もいわば「修道院の危機」という大きなテーマ領域に含まれます。中世において,修道院とは社会の鏡と言ってよろしかろうと思います。したがって,修道院が危機に陥るということは,すなわち社会が安定を失い危機的な状況に陥っているのではないでしょうか。修道院を知ることは,中世社会を知ることにつながるのです。
なお,13世紀までの飢饉について,薄いながらも包括的な研究としてクルシュマンは参照せざるを得ない文献です。
Fritz Curschmann, Hungersnöte im Mittelalter, Leipzig 1900.
本書はPDFファイルで入手可能です。
なんとか教授の要求水準を満たすよう,日々手を加えているところです。
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