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読書メモ 津田拓郎「9世紀末〜10世紀初頭のフランク王国における王国集会・教会会議」
先日第61回日本西洋史学会に行った際初めてお会いした津田さんから抜刷りを送っていただいたのでここでそのさわりを紹介させていただく。カロリング期の論文はしばらく目を通してこなかったので実に新鮮。私、今は初期中世から遠ざかっているけれども、再び取り組むことも視野に入れているので、こういう機会に新しい研究史と知見を得られるのは幸いである。
本論文は著者が2009年に東北大学に提出した博士論文を下敷きに加筆したもので、カロリング朝の「衰退期」と言われている時代における王国集会と教会会議を、年代記とカピトゥラリアから分析している。聖俗貴顕を集めた王国集会・教会会議の開催頻度がカール大帝やルートヴィヒ敬虔帝期と差異がないことから、従来言われてきた「衰退」イメージに疑義を呈している点がその骨子である。
本論は基本的に会議・集会の量的分析から結論を導いているため、今後は質的分析をしていくことが重要なのではないかと感じる。例えば毎年のように王国集会が開かれていても、聖俗有力者がどういう範囲で集まり、何を議題にしていたのかを関連づけて分析すると本論がさらに活かされるように思う。いやひょっとするとすでに博士論文で議論しているのかもしれないが、ちょっとまだ目を通していないので自信がない(恐縮・・・)。
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