学部ゼミ顔合わせ@zoomとコロナ問題に関する歴史系論説と論点
新型コロナウィルスの問題は長期化が予想されており、前期はなかなか学生の皆さんと顔を合わせることは叶わないのでしょう。都立大は授業開始がGW明けとなり、歴史学・考古学教室のガイダンスも延期され、学生の皆さんは1ヶ月以上ぽっかりと時間が空くことになりました。そうした中、教室として学生の皆さんにコンタクトを取っており、教員ごとに対応しているところです。
一昨日、学部演習に参加を希望する新3年生とzoomで顔合わせを行い、近況を報告してもらいました。ここではいわゆる所属ゼミ、指導教員はなかなか定まらないのであくまで授業の履修希望者ですが、今学期は3年生が10人くらい履修したいそうで、これに4年生が3人、さらにひょっとすると2年生が加わります。結構な大所帯となるので英文講読もやり方を考えないとな、と思っているところです(しかもオンラインだし)。授業の内容は英文講読で、14世紀の気候変動、疫病などを論じたB. M. S. Campbell, The Great Transition. Climate, Disease and Society in the Late-Medieval World, Cambridge 2016を読むことにしました。これ、誰か翻訳している人はいるのですかね?もしちゃんと読んで面白ければ訳文を紀要に分割投稿をしたいと思っています。
3年生からは近況を伺いました。現実を受け入れつつ淡々と日々を過ごしている様子。僕としても日常生活面においてはさほど心配はしていませんが、やはりというべきか、専門書、論文へのアクセスが困難、という話がありました。今後しばらく学生はキャンパスに立ち入ることができませんので、教員としてできる支援の形を考えておかねばなりません。
近況報告だけでは物足りないので、以下の、いずれも歴史に携わる筆者による4つの記事を読んできてもらい、感想を聞きました。
- ユヴァル・ノア・ハラリ「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を」
- ユヴァル・ノア・ハラリ「新型コロナウイルス後の世界―この嵐もやがて去る。だが、今行なう選択が、長年に及ぶ変化を私たちの生活にもたらしうる」
- 藤原辰史「パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」
- 朝日新聞「(明日へのLesson)第3週:クエスチョン 感染症による社会の変質を考える 東京大学入試問題から」
僕としては以下の問いを提示して、まだしばらく授業が始まらないので、引き続き考えてもらうことにしました。今回のコロナ・パンデミックを受けて僕たちは考える題材を豊富に持ち合わせており、これ自体はとても幸せなことだと思う次第です。
①過去の感染症の歴史(14世紀の大黒死病や20世紀のスペイン風邪など)を我々はどういうものとして理解し、そこから何を学べるか?(1つの歴史事象で世界は変わり得るのか、という問いもこれに関わります。歴史を考える上で不可欠な視点で、上の嘘だらけの(!)朝日新聞の記事とも関わります)
②今回のパンデミックは社会の仕組みや人々の認識を大きく変えるだろうか?(現状、僕は何でもかんでも大きな転換を主張する言説には懐疑的です)
③グローバル化について、国民国家(主権国家)について(いわゆるGAFAが影を潜め、強権を発動した国家の役割が際立っていますが、これはいき過ぎたグローバル化への反動と捉えることもでき、僕もそれに同意します。コロナ禍以後どうなるか気になっています)
④新しいテクノロジーの活用について(「公民権の一大試金石」とハラリが指摘していますが、人々は公共の利益のためにどれくらいプライヴァシーを明け渡すことに同意できるか、とても関心があります)
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